ほたかだけ |
| 穂高岳 |
冒頭文
山岳の秀美や荘厳を受取って吾が心霊の怡悦(いえつ)と満足とを覚える場合はおのずから二つある。一つは自分が歩きながらに絶えず変化して吾が眼前に展開し行く奇岩や峭壁や、高い嶺の雲や近い渓の水や、風に揺ぐ玉樹の翠(みどり)や、野に拡がる琪草(きそう)の香や、姿を見ぬ仙禽(せんきん)の声や、然様いう種々のものの中を、吾が身が経巡り、吾が魂が滾転(こんてん)し行いて、そして自分というものを以て幽秘神異の世界
文字遣い
新字新仮名
初出
「上高地」筑摩電氣鐵道、1928(昭和3)年7月30日
底本
- 紀行とエッセーで読む 作家の山旅
- ヤマケイ文庫、山と溪谷社
- 2017(平成29)年3月1日