たばたにいたころ (むろおさいせいのこと) |
| 田端に居た頃 (室生犀星のこと) |
冒頭文
鎌倉へうつつてからは、毎日浪の音をきくばかりでさむしい。訪問者も絶えて無いので何だか昔の厭人病者の物わびしい遁世生活を思ひます。西行といふ昔の詩人は、特別にかういふ生活の情趣を好んだらしい。「鴫(しぎ)立つ澤の秋の夕ぐれ」などといふ歌をよむと、昔の厭世主義者の詩境がよくわかる。しかしあれは茶の湯や禪味と關聯した「侘しさ」のあはれであつて、現代人たる僕等の氣分とはぴつたりしない。近代の厭人病者は、む
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「驢馬 第二號」1926(大正15)年5月号
底本
- 萩原朔太郎全集 第八卷
- 筑摩書房
- 1976(昭和51)年7月25日