やまがものがたり |
| 山家ものがたり |
冒頭文
空に出でゝ星くずの明かにきらめくを眺むれば、おのれが心中にも少さき星のありて、心の闇を照すべしと思ふなり。涓々たる谷の小河の草の間を流れ行くを見れば、おのれが心中にも細き小河のありて、心の草を洗ふべしと思ふなり。哀壑に開落する花を見れば、おのれが心中にも時來つて開き時去つて落つべき花のあるべしと思ふなり。願はくは心中一點の星をして、思ふがまゝに其光を放たしめ、涓々たる心中の細流をして、流るべきの岸
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「文學界 第十八號」1894(明治27)年6月30日
底本
- 藤村全集第十六卷
- 筑摩書房
- 1967(昭和42)年11月30日