なききょうかくんをかたる
亡鏡花君を語る

冒頭文

明治二十四、五年頃ではなかつたかと思ふが、私が桐生悠々君と共に上京して、紅葉山人の横寺町の家を訪れた時には、鏡花君は既に其の二畳の玄関にゐた。私達と同郷で、特に私とは小学校が一つなのだが、クラスが違つたせいか、其頃には互ひに相識る機会もなく、私達の通つてゐた石川県専門学校が高等中学になる時、一般の入学試験があり、私達も其の試験を受けたが、通路を隔て私と同列の側にゐた桜色の丸い顔をして近眼鏡をした青

文字遣い

新字旧仮名

初出

「改造 第二十一巻第十号」1939(昭和14)年10月1日

底本

  • 徳田秋聲全集 第23巻
  • 八木書店
  • 2001(平成13)年7月18日