ほんしつてきなぶんがくしゃ
本質的な文学者

冒頭文

日本の文學に對して、僕は常に或る滿たされない不滿を持つて居た。それは僕の觀念する「文學」が、日本の現存してゐる文學とどこか本質に於て食ひちがつて居り、別種に屬して居たからである。然るに梶井君の作品集「檸檬」を讀み、始めて僕は、日本に於ける「文學」の實在觀念を發見した。勿論「檸檬」の作品は、小説といふべきよりは、小品もしくは散文詩の範疇に屬すべきものであるか知れない。しかしながらこの精神は、すべての

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「評論 第十六號」1935(昭和10)年9月号

底本

  • 萩原朔太郎全集 第九卷
  • 筑摩書房
  • 1976(昭和51)年5月25日