なかはらちゅうやくんのいんしょう
中原中也君の印象

冒頭文

中原君の詩はよく讀んだが、個人としては極めて淺い知合だつた。前後を通じて僅か三囘しか逢つて居ない。それも公會の席のことで、打ちとけて話したことはなかつた。ただ最後に「四季」の會で逢つた時だけは、いくらか落付いて話をした。その時中原君は、強度の神經衰弱で弱つてることを告白し、不斷に強迫觀念で苦しんでることを訴へた。話を聞くと僕も同じやうな病症なので、大に同情して慰め合つたが、それが中原君の印象に殘つ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「文學界 第四卷第十二號」1937(昭和12)年12月号

底本

  • 萩原朔太郎全集 第九卷
  • 筑摩書房
  • 1976(昭和51)年5月25日