あくたがわりゅうのすけのし
芥川竜之介の死

冒頭文

1 七月二十五日、自分は湯ヶ島温泉の落合樓に滯在してゐた。朝飯の膳に向つた時、女中がさりげない風でたづねた。 「小説家の芥川といふ人を知つてゐますか?」「うん、知つてる。それがどうした?」「自殺しました。」「なに?」自分は吃驚して問ひかへした。自殺? 芥川龍之介が? あり得べからざることだ。だが不思議に、どこかこの報傳の根柢には、否定し得ない確實性があるやうに思はれた。自分はさらに女中に命じて

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「改造 第九卷第九號」1927(昭和2)年9月号

底本

  • 萩原朔太郎全集 第九卷
  • 筑摩書房
  • 1976(昭和51)年5月25日