しょうがいのかきね
生涯の垣根

冒頭文

庭というものも、行きつくところに行きつけば、見たいものは整えられた土と垣根だけであった。こんな見方がここ十年ばかり彼(かれ)の頭を領していた。樹木をすくなく石もすくなく、そしてそこによく人間の手と足によって固められ、すこしの窪(くぼ)みのない、何物もまじらない青みのある土だけが、自然の胸のようにのびのびと横(よこた)わっている、それが見たいのだ、ほんの少しの傷にも土をあてがって埋(う)め、小砂利や

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮」1953(昭和28)年

底本

  • もうひとつの話〈ちくま文学の森・別巻〉
  • 筑摩書房
  • 1989(平成元)年4月29日