あきのきそじ
秋の岐蘇路

冒頭文

一 大井(おほゐ)、中津川(なかつがは)の諸驛を過ぎて、次第に木曾の翠微(すゐび)に近(ちかづ)けるは、九月も早(はや)盡きんとして、秋風(しうふう)客衣(かくい)に遍(あま)ねく、虫聲路傍に喞々(しよく〳〵)たるの頃なりき。あゝわが吟懷、いかに久しくこの木曾の溪山に向ひて馳(は)せたりけむ。名所圖繪を繙(ひもと)きて、幼き心に天下またこの好山水(かうさんすゐ)ありやと夢みしは昔、長じて人の其山

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「文藝倶樂部 定期増刊 月と露」1903(明治36)年10月

底本

  • 明治文學全集 94 明治紀行文學集
  • 筑摩書房
  • 1974(昭和49)年1月30日