ひのついたたばこ いちめい――たばこしゅうしゅうかのきか |
| 火の点いた煙草 一名――煙草蒐集家の奇禍 |
冒頭文
彼は恋愛を軽蔑した。彼は煙草を愛した。それ故彼は、愛の話を始められると、横を向いて彼の愛するモン・レツポを燻らせた。煙りの中から、恋愛の生れたためしは滅多にない。さうして、彼と彼女との恋愛も、たうとう一服の煙草のやうに楽しげに消えて了つた。 「さやうなら。」「さやうなら。」 後には、彼の煙りだけが一場の事件を煙りとして、気軽にふはふは立ち昇つただけである。——モン・レツポ、ダ・カツポ—— さ
文字遣い
新字旧仮名
初出
「婦人公論 第十二年第四號」1927(昭和2)年4月1日
底本
- 定本 横光利一全集 第二卷
- 河出書房新社
- 1981(昭和56)年8月31日