うもんとりものちょう 32 しゅぼりのはなよめ |
右門捕物帖 32 朱彫りの花嫁 |
冒頭文
1 その第三十二番てがらです。 ザアッ——と、刷毛(はけ)ではいたようなにわか雨でした。空も川も一面がしぶきにけむって、そのしぶきが波をうちながら、はやてのように空から空へ走っていくのです。 まことに涼味万斛(ばんこく)、墨田の夏の夕だち、八町走りの走り雨というと、江戸八景に数えられた名物の一つでした。とにかく、その豪快さというものはあまり類がない。砂村から葛飾野(かつし
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 右門捕物帖(四)
- 春陽文庫、春陽堂書店
- 1982(昭和57)年9月15日