にひゃくはつか
二百二十日

冒頭文

きのふは二百二十日であつて、おとゝひから蒸し暑く豪雨を降らしたり嵐がおとづれたりして、たゞならん景色であつた。それがきのふ午後になつて颱風が過ぎ去つて了つたのであらう、空を見ると雲は未だ空を覆うてはをるが併しその雲の色も險惡な色は無くなつて、殊に風の方向を示して居るやうな矢のやうな雲が數多く現れてその矢のやうな雲の外に綿のやうな雲が散らばつて居て、その綿のやうな雲の間から珍しくも青空が見えて來た。

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「玉藻」1934(昭和9)年10月

底本

  • 日本の名随筆19 秋
  • 作品社
  • 1984(昭和59)年5月25日