ますい
魔睡

冒頭文

法科大学教授大川渉(わたる)君は居間の真中(まんなか)へ革包(かばん)を出して、そこら中(ぢゆう)に書物やシヤツなどを取り散らして、何か考へては革包の中へしまひ込んでゐる。大川博士は気のゆつたりした人で、何事があつても驚くの慌(あわ)てるのといふことはない。世間の人の周章狼狽(しうしやうらうばい)するやうな事に出くはすと、先生極(きはめ)て平気で、不断から透明な頭がいよいよ透明になつて来る。教授会

文字遣い

新字旧仮名

初出

「スバル 第六号」1909(明治42)年6月

底本

  • 現代日本文學大系 7 森鴎外集(一)
  • 筑摩書房
  • 1969(昭和44)年8月25日