あたらしくもならぬじんせい
新しくもならぬ人生

冒頭文

暦の上で何度新しき年を迎へても、心が新たになるのではない。私は、二十代の昔も七十代の今日も、根底においては、自分の考へ方は同じやうに思はれる。經驗を積み知識も豐かになつたにしても、すべて皮相な經驗、皮相な知識の積み重ねであつたのに過ぎないやうに思はれる。そして、大抵の人間が究極の所、さうではないかと私に思はれてゐる。 私は何も知らない嬰兒として、偶然この世に生れて以來、生きるための知識を、獲よ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「朝日新聞」1954(昭和29)年1月8日

底本

  • 正宗白鳥全集第二十九卷
  • 福武書店
  • 1984(昭和59)年3月31日