うもんとりものちょう 20 せんがきのつば |
右門捕物帖 20 千柿の鍔 |
冒頭文
1 その第二十番てがらです。 事の端を発しましたのは、ずっと間をおいて十一月下旬。奇態なもので、寒くなると決まってこがらしが吹く。寒いときに吹く風なんだから、こがらしが吹いたとてなんの不思議もないようなものなんだが、江戸のこがらしとなると奇妙に冷たくて、これがまた名物です。こやつが軒下をカラカラと吹き通るようになると、奇態なものできっと火事がある。寒くて火をよけい使うようになるんだ
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 右門捕物帖(二)
- 春陽文庫、春陽堂書店
- 1982(昭和57)年9月15日