みみたぶのあなのいちれい
耳たぶの穴の一例

冒頭文

奈良縣吉野郡天川村坪(ノ)内の寺井といふ家名の一族の人々には、耳たぶに針で突いたほどの穴があるといふ。是は昔ガタロ(川童)と約束して、此家の子孫の者は決して取らぬといふので、其しるしに耳たぶに穴をあけて置くことにしたのだと謂つて居る。川童との約束は他の多くの例のやうに、馬に惡戲して曳かれたといふのでは無く、こゝの言ひ傳へは「水蜘蛛の怪」といふ話の系統に屬する。即ち釣を垂れて居ると蜘蛛が來ては絲をか

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「民間傳承 八卷八號」1942(昭和17)年12月

底本

  • 定本柳田國男集 第十五巻
  • 筑摩書房
  • 1963(昭和38)年6月25日