にがてのはなし
にが手の話

冒頭文

苦手といふ言葉の用ゐ方が、東京では此頃變つて來て居るやうである。たとへば酒好きが、牡丹餅は僕にはニガテだと謂つたり、又は我まゝ息子が伯父さんはニガテだなどと謂ふのは、單に「是ばかりは閉口」といふやうな意味で、大抵はどうしてニガテなのかを知らずに、たゞ人がさういふからといふだけで使つて居る。地方には全くこの單語の無いところ、又は新たに都會から學んで行つたところも有らうが、もしも古くから使はれる土地が

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「民間傳承 八卷五號」1942(昭和17)年9月

底本

  • 定本柳田國男集 第十五巻
  • 筑摩書房
  • 1963(昭和38)年6月25日