きつねのよめとりということ
狐の嫁取といふこと

冒頭文

狐火は今でも狐の嫁入りと伴なふものゝ如く、考へて居る土地は多いやうだが、大體に追々二つ別々の話とならうとして居る。是まで一向に人は注意しなかつたけれども、動物の中でも特に狐に限つて嫁取りの沙汰があるのは理由が無くてはならぬ。偶然に傳はつて居た右の二地の俗信は、少しばかり此問題に手がかりを與へるものと言つてよからう。自分等の假定では、女性の生活の一大激變たるべき婚姻と産育と二つの時が、最も狐神の信仰

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「民族 三卷六號」1928(昭和3)年9月

底本

  • 定本柳田國男集 第十五巻
  • 筑摩書房
  • 1963(昭和38)年6月25日