ごかいのまど 04 がっさくのし
五階の窓 04 合作の四

冒頭文

15 西村電機商会主西村陽吉が変死を遂げてから二日目の朝、暁方(あけがた)からどんよりと曇っていた空は十時ごろになると粉雪をちらちら降らしはじめた。 朝の跡片づけの手伝いをすませた瀬川艶子は、自分の部屋に定(き)められた玄関脇(げんかんわき)の三畳に引っ込むと、机の前に崩(くず)れ坐(すわ)った。彼女の涼しい目は眠られないふた晩に醜く脹(は)れ上(あ)がり、かわいい靨(えくぼ)の宿った豊頬(

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1926(大正15)年8月

底本

  • 五階の窓
  • 春陽文庫、春陽堂書店
  • 1993(平成5)年10月25日