わしゅうちめいだん
和州地名談

冒頭文

一 「さらぎ考」という論文を、『大和』誌上に見出した時から、私はいつかは一度、大和の地名という問題を考えてみたいと思っていた。明治十九年以前にできた地理局の小地名調査は、奈良県の分は相応に綿密で、自分もその中から若干の抜萃(ばっすい)をして持っていたのだが、誰かに貸してあって今は利用し得ない。そうしてその原本は焼けてしまったのである。控えが県庁にあるか、あるいはまた分散してそれぞれの町村にでも伝わ

文字遣い

新字新仮名

初出

「奈良叢記」駸々堂書店、1942(昭和17)年1月10日

底本

  • 柳田國男全集20
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1990(平成2)年7月31日