ゆきのひ
雪の日

冒頭文

伯林(ベルリン)カイザー街の古い大アパートに棲んで居た冬のことです。外には雪が降りに降っていました。内では天井に大煙突の抜けているストーヴでどんどん薪(まき)をくべていました。電車の地響と自動車の笛の音ばかりで、街には犬も声を立てて居ない、積雪に静まり返った真昼時でした。玄関の扉をはげしく叩(たた)く音——この降るのに誰がまあ、」と思いながら扉を開くと、どやどやと三人ばかり入って来たのは青年、壮年

文字遣い

新字新仮名

初出

「モダン日本」1934(昭和9)年2月号

底本

  • 岡本かの子全集11
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1994(平成6)年6月23日