みちのく |
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冒頭文
桐(きり)の花の咲く時分であった。私は東北のSという城下町の表通りから二側目(ふたかわめ)の町並を歩いていた。案内する人は土地の有志三四名と宿屋の番頭であった。一行はいま私が講演した会場の寺院の山門を出て、町の名所となっている大河に臨み城跡の山へ向うところである。その山は青葉に包まれて昼も杜鵑(ほととぎす)が鳴くという話である。 私はいつも講演のあとで覚える、もっと話し続けたいような、また一役
文字遣い
新字新仮名
初出
「雄弁」1938(昭和13)年9月号
底本
- 岡本かの子全集5
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1993(平成5)年8月24日