うごかぬおんな
動かぬ女

冒頭文

私達が、小田原から、熱海行きの、軽便鉄道に乗り込んだ時も、その一行と一緒になった。 その一行は、新橋から発った私達の二等車へ品川あたりから、始めて入って来た人達であった。重厚な顔付をして、堅く洋服に身を包んだ老紳士のあとに高貴な衣服の裾(すそ)を捌(さば)いて四十先位いな夫人らしい女が続き、次に青いショールをした十九か二十程の令嬢、その後に令嬢の長い袖(たもと)を、支える様にして腰元と見える黄

文字遣い

新字新仮名

初出

「国民新聞」1921(大正10)年1月7日

底本

  • 岡本かの子全集1
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1994(平成6)年1月24日