ぐるめにおくる
食魔に贈る

冒頭文

Larue(ラルュウ) 巴里の雑踏はそこから始まるという大並木路(グランヴウルヴァール)マデレンの辻の角に名料理店、ラルュウがある。 店をイルミネーションで飾るでもなし、英字新聞の大陸版へ広告を出すでもなし、表の構えは普通に塗った木目の板で囲い、ただ内側だけ気持よくこしらえてしとやかに客を待つといった風だ。もし春の夕闇に鶉(うずら)の下蒸しの匂いが廚房(キュイジイス)から匂って出なかったら通り

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1932(昭和7)年3月号

底本

  • 岡本かの子全集1
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1994(平成6)年1月24日