はし |
| 橋 |
冒頭文
こどものときから妙に橋というものが好きだった。こちらの岸からあちらの岸へ人工の仕掛けで渡って行ける。そういった人間の原始的功利の考えがこどもの好奇心の頭を擡(もた)げさせやすいのかとも考える。しかしそれならなんの履物(はきもの)ででもあれ、その上を渡りさえすれば気が済む筈である。だが私の場合は違っていた。どの橋でも真新らしい日和下駄(ひよりげた)の前を橋板に突き当てて、こんと音をさせ、その拍子に後
文字遣い
新字新仮名
初出
「新潮」1933(昭和8)年5月号
底本
- 岡本かの子全集1
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1994(平成6)年1月24日