はなこ
花子

冒頭文

花子には二人の男と二人の女の兄弟があります。花子はそのまんなかに生れました。五つの部屋の真中に花子は眠ります。 晴れ晴れとした春の野辺。ひばりが空高く啼きお陽さまの裳裾(もすそ)がゆらゆらとゆれかがやいて居ます。そして咲き乱れた花が一ぱい! 人は花子のほか誰れも居ません。おかしいとおもいました。少し淋しくありました。が花子は直ぐそれを忘れました。「摘(つ)み草(くさ)して遊ぼうや」 花子の手近に

文字遣い

新字新仮名

初出

「週刊朝日」1924(大正13)年9月28日

底本

  • 岡本かの子全集1
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1994(平成6)年1月24日