むらさきしきぶのびてきじょうちょとじょうどきょう
紫式部の美的情緒と浄土教

冒頭文

紫式部が晩年阿弥陀仏の信仰に依り安心立命を得て愈々(いよいよ)修道に心掛けた様子は式部が、日記の終りに近い条で自ら告白して居るから疑いはない。しかし、私は源氏物語や家集の和歌を読んで、それ等に含まれている式部の美的情緒の一般にも浄土教的思想の影響が可なり在るように思えるからそれに就(つ)いて述べてみ度い。 当時の仏教は霊験(れいげん)仏法や儀礼仏法が盛んであったが、然し心の底から生死の問題に就

文字遣い

新字新仮名

初出

「むらさき」1935(昭和10)年5月号

底本

  • 岡本かの子全集10
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1994(平成6)年5月24日