トシオのみたもの
トシオの見たもの

冒頭文

一 トシオは、大そう賢(かしこ)く生れ付いた男の子でした。それゆえ、まだやっと、今年十一歳になったばかりですのに、もうこの世のなかのいろいろな方面の、様々なことを知って居ました。書物などで読んだことも、一々はっきり、頭に覚え込むという風でした。 しかし、あまり、いろいろ知り過ぎたせいで、このごろ敏夫は却(かえ)って、沢山な疑いを持つ様になりました。先ず、どうして世の中には、こんなに無駄が多か

文字遣い

新字新仮名

初出

「朝日新聞」1921(大正10)年4月21日~30日

底本

  • 岡本かの子全集1
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1994(平成6)年1月24日