せとないかいのあま
瀬戸内海の海人

冒頭文

藝州御手洗(豐田町大崎下島)の邊で聽いた話。此附近ではリョウシと謂へば海人のことである。即ち頭の上に物を載せてあるく、他の地方でイタダキ、オタタ、カネリなどといふ女の一族を意味して居る。 忠海などでは之をカベリと喚んで居る。カベルとは斯うして頭に物を載せる行爲を表する動詞である。 カベリは忠海にも居り、又尾道にも澤山居る。交際は少しも普通とちがはぬやうに見えたが、内實はどうであるか知らぬ。

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「民族 第一巻第一号」民族発行所、1925(大正14)年11月1日

底本

  • 定本柳田國男集 第一巻
  • 筑摩書房
  • 1963(昭和38)年9月25日