さいぎょうのめ
西行の眼

冒頭文

憤怒に打ち克つもの、それはただ慈心のみである。世に、対立を超越したものほど、尊く、高く、かつ強きものはない。 平安朝もおわりに近いころ、北面の武士から、年わかくして仏門にはいった二人の偉丈夫があった。その一人は佐藤義清(のりきよ)、もう一人は遠藤盛遠(もりとお)である。義清は二十三歳、盛遠は十八歳で剃髪した。前者は一所不住の歌人西行(さいぎょう)、後者は高雄神護寺の荒行者文覚(もんがく)である。

文字遣い

新字新仮名

初出

「青年」1933(昭和8)年6月

底本

  • 仏教の名随筆 2
  • 国書刊行会
  • 2006(平成18)年7月10日