あい

冒頭文

その人にまた逢うまでは、とても重苦しくて気骨の折れる人、もう滅多(めった)には逢うまいと思います。そう思えばさばさばして別の事もなく普通の月日に戻り、毎日三時のお茶うけも待遠しいくらい待兼ねて頂(いただ)きます。人間の寿命に相応(ふさ)わしい、嫁入り、子育て、老先の段取りなぞ地道に考えてもそれを別に年寄り染みた老け込みようとは自分でも覚えません。縫針の針孔(めど)に糸はたやすく通ります。畳ざわりが

文字遣い

新字新仮名

初出

「文筆」1938(昭和13)年9月号

底本

  • 岡本かの子全集5
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1993(平成5)年8月24日