おくじょうねんだけのぜってんにたつき
奥常念岳の絶巓に立つ記

冒頭文

泊まったのは、二(に)の俣(また)の小舎(こや)である。 頭の上は大空で、否、大空の中に、粗削(あらけず)りの石の塊(かたまり)が挟まれていて、その塊を土台として、蒲鉾形(かまぼこなり)の蓆(むしろ)小舎が出来ている。立てば頭が支(つか)える、横になっても、足を楽々延ばせない、万里見透しの大虚空(おおぞら)の中で、こんな見すぼらしい小舎を作って、人間はその中に囚われていなければならない、戸外に

文字遣い

新字新仮名

初出

「中學世界 第十卷第七號」博文館、1907(明治40)年6月

底本

  • 日本近代随筆選 1出会いの時〔全3冊〕
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2016(平成28)年4月15日