びわのはな
枇杷の花

冒頭文

顔を洗う水のつめたさが、一朝ごとに身に沁みて、いよいよつめたくなって来る頃である。昼過に何か少し取込んだ用でもしていると日の短くなったことが際立(きわだ)って思い知られるころである。暦を見て俄(にわか)にその年の残った日数(ひかず)をかぞえて見たりするころである。菊の花は既に萎(しお)れ山茶花(さざんか)も大方は散って、曇った日の夕方など、急に吹起る風の音がいかにも木枯(こがらし)らしく思われてく

文字遣い

新字新仮名

初出

「大和 第一卷第一號」大和発行所、1935(昭和10)年1月

底本

  • 日本近代随筆選 1出会いの時〔全3冊〕
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2016(平成28)年4月15日