ねがお |
| 寐顔 |
冒頭文
竜子(りゅうこ)は六歳の時父を失ったのでその写真を見てもはっきりと父の顔を思出すことができない。今年もう十七になる。それまで竜子は小石川(こいしかわ)茗荷谷(みょうがだに)の小じんまりした土蔵付の家に母と二人ぎり姉妹(きょうだい)のようにくらして来た。母の京子は娘よりも十八年上であるが髪も濃く色も白いのみか娘よりも小柄(こがら)で身丈(せい)さえも低い処から真実姉妹のように見ちがえられる事も度々(
文字遣い
新字新仮名
初出
「女性」1923(大正12)年6月
底本
- 雨瀟瀟・雪解 他七篇
- 岩波文庫、岩波書店
- 1987(昭和62)年10月16日