ちるやなぎまどのゆうばえ |
| 散柳窓夕栄 |
冒頭文
一 天保(てんぽう)十三壬寅(みずのえとら)の年の六月も半(なかば)を過ぎた。いつもならば江戸御府内(ごふない)を湧立(わきた)ち返らせる山王大権現(さんのうだいごんげん)の御祭礼さえ今年は諸事御倹約の御触(おふれ)によってまるで火の消えたように淋(さび)しく済んでしまうと、それなり世間は一入(ひとしお)ひっそり盛夏の炎暑に静まり返った或(ある)日の暮近くである。『偐紫田舎源氏(にせむらさきいな
文字遣い
新字新仮名
初出
「三田文学」1913(大正2)年1月、3月、4月
底本
- 雨瀟瀟・雪解 他七篇
- 岩波文庫、岩波書店
- 1987(昭和62)年10月16日