たぬきとムジナ
狸とムジナ

冒頭文

一 すこしのんきな話をしてみよう。本年五月の末、十数名の元気のいい文士の一行に加わって、北海道へ海上の旅をした。船は満員で皆入込(いりごみ)のごろ寝をした中で、長谷川如是閑(はせがわにょぜかん)と自分と二人だけは、老人というかどをもって好い船室を与えられ、自由に起臥していたのが問題になったものか、みんなが集まってがやがやしている中へふいと顔を出すと、ああ今あなたに聴いてみたらと言っていたところで

文字遣い

新字新仮名

初出

「上毛の民俗」煥乎堂、1948(昭和23)年8月1日

底本

  • 柳田國男全集 24
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1990(平成2)年9月25日