じんりどうめいまさにならんとす
人狸同盟将に成らんとす

冒頭文

狸の化けた憑いたは皆大いなる寃罪で、永い間人と狸との感情を疎遠せしめて居た主因は「カチ〳〵山童話」であつたと云ふことが、此頃漸く明瞭ならんとするのは自他の爲慶すべき傾向である。狸は人間に於て渡瀬理科大學教授の外に、更に一箇の有力且つ善良なる同情者を得た。それは史蹟天然記念物保存會の戸川殘花翁である。翁は此頃タヌキ考の稿本を自費印刷して我々に頒ち、狸が我々に取つて百の愛すべきあつて一つの憎むべき無き

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「郷土研究一卷八號」郷土研究社、1913(大正2)年10月10日

底本

  • 定本柳田國男集 第二十九巻
  • 筑摩書房
  • 1964(昭和39)年5月25日