うたのうるおい
歌の潤い

冒頭文

潤いのある歌と、味(あじわ)いのある歌と、そこにどういう差があるかと考えて見た。単に詞(ことば)の上で見るならば、潤いのあるということは、客観的な云(い)い方で味いのあるということは、主観的な云い方であるとも云える。しかし細微に両者の意味を推考して見ると、両者に幾分の相違があるようにも思われる。 味いのある歌であるが、つまらぬ歌であるというような歌があるであろうか。またそれに反して、味いは少し

文字遣い

新字新仮名

初出

「アララギ 第六卷第三號」アララギ発行所、1913(大正2)年3月1日

底本

  • 左千夫全集 第七卷
  • 岩波書店
  • 1977(昭和52)年6月13日