いとじょおぼえがき
糸女覚え書

冒頭文

秀林院(しうりんゐん)様(細川越中守忠興(ただおき)の夫人、秀林院殿華屋宗玉大姉(くわをくしゆうぎよくだいし)はその法諡(ほふし)なり)のお果てなされ候(さふらふ)次第のこと。 一、石田治部少(ぢぶせう)の乱の年、即ち慶長五年七月十日、わたくし父魚屋(なや)清左衛門、大阪玉造(たまつくり)のお屋敷へ参り、「かなりや」十羽、秀林院様へ献上仕り候。秀林院様はよろづ南蛮渡りをお好み遊ばされ候間

文字遣い

新字旧仮名

初出

「中央公論」1924(大正13)年1月

底本

  • 現代日本文學大系 43 芥川龍之介集
  • 筑摩書房
  • 1968(昭和43)年8月25日