かんそうのとき ――ちょうかたいしへんにじゅういち――
観想の時 ――長歌体詩篇二十一――

冒頭文

黎明の不尽 天地(あめつち)の闢(ひら)けしはじめ、成り成れる不尽の高嶺(たかね)は白妙の奇しき高嶺、駿河甲斐二国(ふたくに)かけて八面(やおもて)に裾張りひろげ、裾広に根ざし固めて、常久に雪かつぐ峰、かくそそり聳やきぬれば、厳(いか)しくも正(たゞ)しき容(かたち)、譬ふるに物なき姿、いにしへもかくや神さび神ながら今に古りけむ。たまたまに我や旅行き、行きなづみ振さけ見れば、妻と来てつつしみ仰げ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「大觀 二月號 大隈侯哀悼號 第五卷第貳號」實業之日本社、1922(大正11)年2月1日

底本

  • 白秋全集 8
  • 岩波書店
  • 1985(昭和60)年7月5日