こだま(さんじゃくかくしゅうい)
木精(三尺角拾遺)

冒頭文

「あなた、冷えやしませんか。」 お柳(りゅう)は暗夜(やみ)の中に悄然(しょんぼり)と立って、池に臨(のぞ)んで、その肩を並べたのである。工学士は、井桁(いげた)に組んだ材木の下なる端(はし)へ、窮屈(きゅうくつ)に腰を懸(か)けたが、口元に近々(ちかぢか)と吸った巻煙草(まきたばこ)が燃えて、その若々しい横顔と帽子の鍔広(つばびろ)な裏とを照らした。 お柳は男の背(せな)に手をのせて、弱いも

文字遣い

新字新仮名

初出

「小天地 第一巻第八号」1901(明治34)年6月10日

底本

  • 化鳥・三尺角 他六篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2013(平成25)年11月15日