りょこうについて
旅行に就いて

冒頭文

余は旅行が好きである、年々一度は長途の旅行をしなければ氣が濟まぬやうになつた。兎に角全國歩いて見たい積りで地圖の上に朱線の殖えるのを樂みの一つにして居る。時には汽車や汽船の便を借りることもあるが、大抵は徒歩である。隨つて身體には苦勞を掛けて、歸りには顏が黒くなつて頬骨が出る。それで苦勞をすればする程、旅行の面白味が増して、話の種が殖えて來る。人に旅中の話をすれば、人も面白いといふ。自分は益々得意に

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「茨城縣立下妻中學校雜誌 爲櫻 第十七號」1907(明治40)年7月15日

底本

  • 長塚節全集 第五巻
  • 春陽堂書店
  • 1978(昭和53)年11月30日