あいびき
あひびき

冒頭文

火の氣がないので、私は鷄介と二人で寢床にはいつてゐた。朝から喋つてゐたので、寢床へはいると喋ることもなく、私は、あをむけになつて、眼の上に兩手をそろへて眺めてゐた。鷄介も兩の手を出した。私は鷄介の大きい掌に自分の手を合はせてみた。「冷い?」鷄介は默つて私の手を大きい掌で包みこむやうに握つた。朝から雨が降つてゐるので、私は落ちついてしまつた。何もする氣がしなかつた。草におく露のやうに、きらきらと光つ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「別冊文藝春秋」1946(昭和21)年12月

底本

  • 林芙美子全集 第六巻
  • 文泉堂出版
  • 1977(昭和52)年4月20日