ぜにがたへいじとりものひかえ 320 おろくのやくめ
銭形平次捕物控 320 お六の役目

冒頭文

一 「あ、八五郎親分じゃありませんか」 江の島へ行った帰り、遅くもないのに、土蔵相模(どぞうさがみ)で一と晩遊んだ町内の若い者が五六人、スッカラカンになって、高輪(たかなわ)の大木戸を越すと、いきなり声を掛けたものがあります。 「誰だい、俺を呼んだのは」 振り返ると、海から昇った朝陽を浴びて、バタバタと駆けてきた女が一人、一行の前に廻って、大手を拡げるではありませんか。 「巴屋(ともえや)のお

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1954(昭和29)年5月号

底本

  • 橋の上の女 ――銭形平次傑作選②
  • 潮出版社
  • 1992(平成4)年12月15日