ぜにがたへいじとりものひかえ 376 はしのうえのおんな |
| 銭形平次捕物控 376 橋の上の女 |
冒頭文
一 「親分、たまらねえ事があるんで、これから日本橋まで出かけますよ、いっしょに行って見ちゃ何うです」 巳(み)の刻(こく)近い、真昼の日を浴びて、八五郎はお座敷を覗いて顎(あご)を撫でるのです。四月のある日、坐っていると、ツイ居睡(いねむ)りに誘われるような、美しい日和(ひより)です。桜は散ったが苗売(なえうり)の声は響かず、この上もなく江戸はのんびりしておりました。 「頼むから日蔭にならないで
文字遣い
新字新仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋新社、1957(昭和32)年4月号
底本
- 橋の上の女 ――銭形平次傑作選②
- 潮出版社
- 1992(平成4)年12月15日