ていそうについてのざっかん
貞操に就いての雑感

冒頭文

在来の道徳の中でも一番婦人を苦めたものは貞操であるらしい。 私は今迄かなり貞操と云ふことについては他人の考へを聞いたり教へられたりしたけれど私自身のちやんとした貞操観と云ふものは持たなかつた。私は本当にその事に就いてはさう考へるやうな事に今迄出会はなかつたし自分でも是非考へなければならないことであるとも思はなかつた。併(しか)し今迄他の人々の所謂(いわゆる)貞操観を聞く度びに多少の意見は持たな

文字遣い

新字旧仮名

初出

「青鞜 第五巻第二号」1915(大正4)年2月号

底本

  • 定本 伊藤野枝全集 第二巻 評論・随筆・書簡1――『青鞜』の時代
  • 學藝書林
  • 2000(平成12)年5月31日