ふゆのやま |
| 冬の山 |
冒頭文
都大路に木枯が音(おと)ずれて、街路樹の梢が日に増しあらわになりまさる頃になると、濁りがちな空の色も流石(さすが)に冴えて、武蔵野をめぐる山々の姿が、市中からも鮮(あざやか)に望まれる日が多くなる。雪の富士、紫の筑波は言うに及ばず、紫紺の肌美しき道志(どうし)、御坂(みさか)の連山の後から、思いも懸けぬ大井川の奥の遠い雪の山がソッと白い顔を出して、このほこらかな文化の都を覗いていることさえも珍しく
文字遣い
新字新仮名
初出
「旅」1926(大正15)年1月
底本
- 山の憶い出 下
- 平凡社ライブラリー、平凡社
- 1999(平成11)年7月15日