はじめてちちぶにはいったころ
初めて秩父に入った頃

冒頭文

当初、山を愛好する一部の人々の間にのみ行われていた登山が、一般世間からは物ずきの骨頂と蔑視されながらも、勇敢に口や筆で夫等(それら)の人々が宣伝につとめた努力は報いられて、次第に同好者を獲得することに成功し、後年の隆盛を想わせる曙光にも似た明るい前途を約束し得るに至ったことは、誠に愉快なことであった。 其(その)頃の登山は言う迄もなく夏季に限られていた。何せ交通不便という一大障碍(しょうがい)

文字遣い

新字新仮名

初出

「旅」1937(昭和12)年10月

底本

  • 山の憶い出 下  
  • 平凡社ライブラリー、平凡社
  • 1999(平成11)年7月15日