たにさんだい
渓三題

冒頭文

いつぞや秩父の長瀞(ながとろ)見物に行って来た人が「どうもいい景色ですな、あんな所は山の中にもそう沢山はありますまい」というて、其(その)話をして呉れたことがある。私は黙って夫(それ)を聞きながらも、始めてあれを見る都の人には無理もないことだと思った。然(しか)し長瀞は秩父赤壁などと大袈裟に宣伝されてはいるものの、河の両岸が極めて古い地質時代の岩石から成っていることが少し珍しいだけで、取り立ててい

文字遣い

新字新仮名

初出

「中学生」1924(大正13)年8月

底本

  • 山の憶い出 下  
  • 平凡社ライブラリー、平凡社
  • 1999(平成11)年7月15日