きただけとあさひだけ
北岳と朝日岳

冒頭文

白峰北岳 日は忘れたが明治二十六年の八月であった、初めて木曾の御岳に登った時、兼(かね)てこの山は高さ一万七百尺、日本第二の高山であると地理書で教えられ、又(また)近所の御岳講の講中で登山したことのある人の話にも、頂上からは富士山が高く見えるだけで、外に目に立つ山は無いと聞かされていたので、そうと許(ばか)り信じていた私は、意外な展望にすっかり驚いてしまった。成程南には目ぼしい山もなく、西には遠

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造」1929(昭和4)年6月

底本

  • 山の憶い出 下  
  • 平凡社ライブラリー、平凡社
  • 1999(平成11)年7月15日